FAZER LOGIN「……ママぁ」
頬をつんつんと突かれた。
「ん……?」
「ママ、おきてぇ」「……陽奈?」ゆっくり目を開ける。
カーテンの隙間から、朝の光が差し込んでいた。 もう朝なんだ。 あれから、ぐっすり眠れたみたい。「ママ、おはよ!」
「おはよう、陽奈」私は身体を起こそうとして……
「……あれ?」
動けない。どうして? 腰のあたりに、何かが……。 そっと視線を下ろすと、大きな腕。……腕?
えっ!?慌てて振り返ると、すぐ後ろに真人さんの寝顔があった。
「……ママぁ」 頬をつんつんと突かれた。「ん……?」「ママ、おきてぇ」「……陽奈?」 ゆっくり目を開ける。 カーテンの隙間から、朝の光が差し込んでいた。 もう朝なんだ。 あれから、ぐっすり眠れたみたい。「ママ、おはよ!」「おはよう、陽奈」 私は身体を起こそうとして……「……あれ?」 動けない。どうして? 腰のあたりに、何かが……。 そっと視線を下ろすと、大きな腕。 ……腕? えっ!? 慌てて振り返ると、すぐ後ろに真人さんの寝顔があった。「…………っ!!」 ち、近い!! 近すぎる!! そうだった。昨夜、三人でくっついて寝たんだった! でも、まさか朝までこのままだったなんて! 真人さんの腕が、私と陽奈を包み込むように回されている。 私はすっかり、真人さんの胸に背中を預けていた。 しかも私の手が、真人さんの服をぎゅっと握っている。 ……え? ちょっと待って。 これ、私が離さなかったってこと!?「ママ?」 陽奈が不思議そうに首を傾げる。「おかお、あかいよ?」「えっ!?」「おねつ?」「ち、違うよ!」「じゃあ、どうしたの?」「な、なんでもない!」 慌てて真人さんの服から手を離
「はあっ……はあっ……!」 心臓が激しく鳴っている。 怖い。 怖い、怖い! まだ、肩を掴まれた感触が残っている気がする。 ぼろぼろと涙がこぼれる。ぎゅっと自分自身の体を抱きしめた。「葵さん!」 すぐ隣から声がした。「……っ!?」 びくっと身体が跳ねる。「葵さん、僕だよ。真人だよ」「ま、真人……さん……?」
「陽奈ちゃんを守るのは、葵さんだけの役目じゃない」 真人さんが私を見つめる。「僕にも、守らせてほしい」「……真人さん」「葵さんも、陽奈ちゃんも。二人とも大切だから」 その言葉に、胸がいっぱいになった。 大切――真人さんにとって、私たちは大切な存在なんだ。「どうして、そこまでしてくれるんですか?」 ずっと聞きたかった。 最初は、私たちを助けてくれただけだった。それなのに、家に住まわせてくれて、陽奈のことも、まるで自分の娘みたいに可愛がってくれて。「……私たち、偽装家族なのに」 そう言った瞬間、胸がちくりと痛んだ。 自分で言っておきながら、嫌な言葉。 偽装家族。 そうだよね。 私たちは、本当の家族じゃない。真人さんが優しくしてくれるのも、きっと責任感が強いから。 「……葵さん」 真人さんが、少しだけ真剣な顔になった。「僕はね、偽装だから二人を大切にしているわけじゃないよ」「……え?」「最初は、確かに守ってあげたいと思った。それだけだったけど、一緒に過ごしているうちに、気持ちが変わったんだ」 その言葉に心臓が跳ねた。「……気持ち?」「うん」 真人さんが微笑む。「家に帰ったら、葵さんと陽奈ちゃんがいる。それが、すごく嬉しい」 淋しい家に一人で帰る孤独……それはわかる気がする。 誰かが一緒にいてくれるだけで、自分のことを「お帰り」って出迎えてくれるだけで、その日いちにちが幸せになることを、私は知っている。「陽奈ちゃんが『しゃちょーさん』って駆け寄ってくれるのも、葵さんがご飯を作ってくれるのも、
「じゃあ、僕もさっそくなでなで実践してみようかな」「え?」 真人さんが陽奈の向こうから、そっと手を伸ばしてきた。 そして、私の頭を優しく撫でる。「……っ!?」「葵さん。今日は怖かったね」「ま、真人さん!?」「もう大丈夫だよ。僕がいるから」 大きな手が、ゆっくりと髪を撫でる。 ……なに、これ。 子ども扱いされているはずなのに。 どうして、こんなにドキドキするの!?「ママ、どう?」 陽奈が嬉しそうに聞いてきた。「げんきになった?」「えっ!? あ、うん……!」「しゃちょーさん、なでなでじょうず!」「ありがとう。陽奈ちゃんのおかげだね」 真人さんが笑った。 もう! 二人して、私を甘やかさないでよ。 ……でも、もう少しだけ、この手に撫でられていたい。 そう思ってしまった私は、きっと相当重症だ。「じゃあ、次は陽奈ちゃんの番だね」「ひな?」「うん。陽奈ちゃんも、今日はいっぱい頑張ったから」 真人さんが陽奈の頭を撫でる。「お買い物も上手にできたし、ママのことも励ましてくれたでしょう?」「うん!」「えらかったね」「えへへ!」 陽奈が嬉しそうに目を細める。「しゃちょーさんも、なでなで!」「僕も?」「うん! しゃちょーさんも、がんばった!」「そっか。ありがとう」 真人さんが頭を下げると、陽奈が小さな手でぽんぽんと撫でた。「いいこ、いいこ!」「ははっ。ありがとう」 ……ふふっ。
一緒に寝る? とか聞かれたせいで顔が一気に熱くなる。 真人さんがくすっと笑った。「冗談だよ」「も、もう!」「ごめん。葵さんの反応が可愛くて」「…………!」 か、可愛い!? 今、可愛いって言った!? この人、敬語をやめてから、どんどん距離が近くなってない!?「ママー!」 陽奈が私の服を引っ張った。「ひな、まんなか!」「え?」「ママとしゃちょーさんの、まんなかでねる!」「陽奈……」「だって、ふたりともだいすきだもん!」 満面の笑顔。 ああもう、そんなことを言われたら、何も言えなくなっちゃう。 真人さんが陽奈の頭を撫でた。「じゃあ、陽奈ちゃんを真ん中にしよう」「やったぁ!」「ただし、僕はベッドの横に布団を敷くからね」「くっつけて?」「うん。くっつけよう」 陽奈が嬉しそうに飛び跳ねる。 その姿を見て、真人さんも笑った。 私たちは三人で寝具を整えることにした。「しゃちょーさん、こっち!」「はい、先生」「せんせいじゃないよ!」「あれ? さっき先生になるって言ってなかった?」「いまは、ひな!」「そっか。じゃあ、陽奈ちゃん」「はーい!」 真人さんが予備の布団を運んでくる。 私も手伝おうとしたけれど、あっさり断られてしまった。「葵さんは陽奈ちゃんと待ってて」「でも、これくらいなら……」「今日はいろいろあっただろう? 少し休んで」「……ありがとう」「どういたしまして」 真人さんは手際よく布団を敷いてくれた。 ベッドのすぐ横に、一組。陽奈がその布団を
家に戻れることになったので、早速家に戻った。 もうストーカーからは連絡がない。もかちゃんは警 察に預けたし、この家に盗聴器などの類はないと信じたい。 注文した宅配オムライスの夕食をすませ、陽奈と一緒にお風呂に入った。 陽奈の保育園の話をたっぷり聞いて、お風呂から上がってパジャマになって、髪を乾かした。「しゃちょーさーん」 陽奈がタタタッと真人さんの方へかけて行った。「じゃあ、そろそろお泊まり会の準備をしようか」 真人さんが陽奈を抱っこしてくれて、そのまま私に微笑んだ。「……本当に、いいの?」「もちろん。今日は三人で寝ようって約束しただろう?」「でも、真人さんの寝室にまでお邪魔するなんて……」「葵さん」「……なに?」「遠慮禁止」「あ……」 また言われてしまった。「それに、僕だって一人で寝るより、みんなと一緒の方が楽しそうだと思ってるんだ」「しゃちょーさんも、おとまりかいしたいの?」「うん。実はお泊り会って初めてなんだ。すごく楽しみで」「ええっ!?」 陽奈が目を丸くした。「しゃちょーさん、おとまりかいしたことないの!?」「ないんだよ。だから、陽奈ちゃんが僕に教えてくれる?」「いいよ! ひな、おとまりかいのせんせいになる!」「それは頼もしいな」「まずね、おふとんをならべるの!」「なるほど」「それから、みんなでおしゃべりするの!」「ふむふむ」「それからね、ないしょのおはなし!」「秘密の話?」「そう! ママにはないしょ!」「えっ、ママは仲間外れ?」「あ、きょうはママもいっしょだ!」「じゃあ、誰に内緒なの?」







